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高橋 洋平|YOHEI TAKAHASHI

2000年代後半にクラブでのライブペインティングよりキャリアを開始。後に壁画を主な媒体として活動。

近年並行して制作するタブローは散歩の中で出会った光景をモチーフに、壁画制作の中で培った配色・構図・筆触を用いて表現する。

高橋は2000年代後半、クラブでのライブペイントを軸にペインターとしての生活をスタートさせました。
今でこそあまり出くわすことの少なくなったシーンであるライブペイントは当時HIPHOPやレイブカルチャーと密接に関わっており、イベントに遊びに行くとステージの上やフロアの一角の暗がりで爆音の中、酒を飲みながら筆を進めるペインターの姿を必ずと言っていいほど見かける時代があったのです。
良くて一晩、短いと数十分から数時間で仕上げなければいけないというライブペイントならではの制約の中で磨かれた確かな描写力とテクニック、ダイナミックな筆致や色彩で描かれる高橋の作品はライブペイントの枠を超え、よりパブリックな表現方法であるミューラルアート(壁画)へと舞台を広げます。
大きな作品を短時間で、そして人に見られるという条件のもとで技術や精神を磨いてきた高橋にとって壁は自分を全てをぶつけるにはもってこいのキャンバス。彼はこの数年で数多くの壁画を残してきました。
また、彼は近年平面のキャンバス作品も数多く発表しています。
ライブペイントやミューラルアートは外に開かれたものであり公共性を含んでいますが高橋にとってキャンバスは彼個人のものでありより私的な物語を伝える媒体です。
多くの人が経験したであろうコロナ禍における生活の変化。限られた行動範囲の中で高橋は散歩をすることと絵を描くことを繰り返すことで自分の今の着眼点を探ることになりました。
そうしてできた私小説のような、彼の生活やそこにおける視点が印象的に描かれているのが高橋の近年の作品です。
大きなもの、そして壁や板、といったある種の硬さを持った対象に向かうときの多少荒々しかった筆致は静かな緩急を得て、細部に見えるさまざまな技術が主張無く同居してます。

ここで描かれているのは滝と一羽の白い鳥です。
まずこの作品のイメージを構築するにあたり、高橋はインターネットのマップで白鳥町周辺を散策し白鳥神社における神話をリサーチをしました。いくつかのスケッチを完成させましたがデジタル世界上での散策では視覚的にも感覚的にも解像度がどうしても低く、実際に現地を訪ね施設の周辺を巡る時間をつくりました。
この作品では先に記した通り、阿弥陀ヶ滝という滝を背景に、羽ばたく白鳥が描かれています。実はこの二つのモチーフは来訪前にも現れていました。
しかし、実際に東京から新幹線に乗って白鳥町まで辿り着き、阿弥陀ヶ滝を目の前にしたときに受け取った神聖で荘厳な印象。この全ての時間の流れやその行程の時々で感じる自身の感情の起伏。そういった粒子のような極めて細かく抽象的な記憶は来訪前のスケッチ上には描かれてはいません。
高橋にとって、製作とはキャンバスに向かって筆を走らせているときだけではなく、日々の生活の中で得る全ての時間です。
高橋が自分自身でその土地に立ち、踏み締め、視て、湧き出る自分の感情と向き合うこと。
その限られた時間の中で思案されることは直接的に作品に対して関係しているとは限りません。
しかし、それらの全てがキャンバス上で色となりかたちとなり、流れ落ちる滝と一羽の白い鳥という極めてシンプルなモチーフがようやくみずみずしいストーリーを纏って描かれることになるのです。

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