FEB 3 - FEB 23 2026
- 1月22日
- 読了時間: 5分

唯今 Chapter: 5
「巡る周辺(THE MOTIF AS A MOTIVE)」
[会期|DATE]
2/3-2/23
[場所|PLACE]
金沢21世紀美術館
本展覧会は故粟津潔の自邸であり現在はアートスペースとして運営される「AWAZU HOUSE ART CENTER」にて
2025年3月に開催された山口幸士による個展「風景の向こうがわ」に集った三名による展覧会です。
川崎南部の過酷なエリアで生まれ育ち、現在では日本を代表するラッパーであるT-Pablowと同じく川崎にルーツがある山口幸士。
共通の友人を介して二人の交流は始まり、風景の向こうがわ展ではT-Pablowによるアカペラでのリリックの朗読が披露されました。
また、川崎に長く住む詩人でありフォークシンガーである友川カズキのパフォーマンスも同夜におこなわれ、
川崎という街の風景としての言葉、新旧ブルース(魂)が山口の作品と共に展示空間を満たしました。
本展のもう一人の参加作家である杉本篤は育った街は違えど山口と同様にスケーターです。スケートボードのフィルマーとしての立ち位置から独自の視点で街の情景を捉えてきた杉本は「風景の向こうがわ」展において、
T-Pablowのドキュメントと友川カズキのパフォーマンスをベースとした映像作品をつくりあげました。
川崎という街は多摩川という大きな川沿いに南部、中部、北部と分かれ、エリアによって歴史的背景が大きく異なり、横断するとその「空気」の違いを肌で感じることができます。
山口が頻繁に描くモチーフとしての水面は、紛れもなく多摩川のものですが、それがどこの川なのかを読み解くことは実はあまり重要ではありません。
山口はそこにある言葉もしくはその奥の言葉にできない感情のようなものを絵画を通して伝えたいと考えています。
T-Pablowは南部の街の雑踏から自らの言葉を見つけ紡いできました。それはまさに山口が描こうとしている「風景に潜む言葉や感情」です。
誰もいない小さな公園、なんということのない日常の一コマ。そこには少年たちのフリースタイルが聴こえ、見えない感情が溢れている。
T-Pablowという存在がその風景の記憶となって存在しているのです。
杉本は本展覧会での作品の制作にあたり、初めて訪れた川崎という街からカメラのレンズを通して自分自身を探しました。
特別な瞬間ではなく自分の知っている「どこにでもある日常」を見つけることで「自ら」を滑り込ませる。
ただ記録する、という行為ではなくセルフドキュメントとして作品を成立させます。
絵画から聞こえる言葉、言葉から浮かぶ映像、映像に居る自分。
それぞれの動機(MOTIVE)を持って、固有の一つの街から採取したことによって生まれた三つのエレメント・作品(MOTIF)が、
相互に輝きを反射することでその街の特異性を失い匿名性を帯び、その街や風景、言葉は誰のものにでも変容します。
水は古代から存在し、巡る水の周辺には生物や人々の営みが発生します。
その声なき言葉に耳を目を心を澄ませてください。
[ 作家|ARTISTS ]
山口 幸士 | YAMAGUCHI KOJI 神奈川県川崎市出身。街を遊び場とするスケートボードの柔軟な視点に強く影響を受け、日常の風景や身近にあるオブジェクトをモチーフにペインティング、ドローイング、コラージュなどさまざまな手法を用いて独特な視点に転換しています。 また、現在までに川崎のリサイクル工場や粟津潔邸、自身が通うジャズ喫茶での展示などギャラリー以外でのプロジェクトとしての展示も自主的につくりあげています。 主な個展に2023年「Koji Yamaguchi」T&Y Project (東京)、2022年「小さな光」NDK Recycle Factory (神奈川)、2020年「静かな時間」Gallery Trax (山梨)、2018年「CITYSCAPE」Nepenthes NY(ニューヨーク)など。2023年に初作品集 「Days」を美術出版社から刊行。
T-Pablow T-Pablow
1995年11月3日生まれ、神奈川県川崎市出身のラッパー。中学時代に渡米して直にストリートカルチャーに触れ、ヒップホップへ傾倒。2014年に地元川崎でBAD HOPを結成。2024年に東京ドームのライブを最後に開催し現在はソロで活動しています。T-Pablowは現代の川崎の街そのものを象徴とするような存在です。T-Pablowは、重工業都市として発展し「飲む打つ買う」という文化が今なお根強く残るこの街でラップの技術を磨き地元の仲間と共に音楽を発信し、実直に公演を重ねてきました。ラップミュージックという表現で自身が過ごした日常そのものを伝え、夢をみることを肯定し、そしてそれを体現するT-pablowは現代のユースカルチャーにおいて多くの人々に希望を与える存在の一人です。
杉本篤 | SUGIMOTO ATSUSHI 13歳でスケートボードを始め、18歳頃よりスケートボードを題材に映像制作を始める。映像作品は形式的なもではなく、物事に対する視点、精神性や態度の在り方への探求を扱うものとして考える杉本は他者を撮影することで知りたかったのは自分自身のことであると気づき、以降自らを主軸においた作品を制作しています。
現在ではスケートボードでの実践を通じて学び得たことを芯に、アスファルトを使った大型の彫刻作品やスケートボードのウィールの音を使ったサウンドインスタレーションといった映像の解釈を拡張するようなプロジェクトも発表しています。それらは杉本の思考としての彫刻を鑑賞するためのヒントを含んでおり、その全ては「ただ、そこにある」路上という抽象的な存在と自身の在り方を照らし合わせることで見つけた眼差しです。
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